プラトンの2つの偉業と1つの提案
第4章の続き。
◎プラトン(BC427~347)
ソクラテスと違って、著作がたくさん残っているらしい。
本名は「アリストクレス」。アリストテレスと似すぎてる。
通称がプラトンでよかった。
アリストテレスとは41歳差だが、ラファエロの「アテナイの学堂」の中央に2人が並んで話している様子が描かれている。
また、
「西洋のすべての哲学は、プラトン哲学への脚注にすぎない」
と言われているほどの存在だ。
そこまで言わしめるプラトンとはいったい何をした人なのか。
そしてこの2つは、ピュタゴラス教団の影響を受けているという。
どういうことか。
・イデア論
イデアというのは、ものごとの本質となる観念。
それは天上にあるとされ、地上の実在と対になっている。
天上のイデア世界↔地上の実在世界
これは二元論であり、輪廻転生の思想も含まれている。
ピュタゴラス教団もこの両者の特性を持っていたという。
ちなみに、イデアは「idea」と書くが、英語の「idea」にギリシャ語のイデア、つまり「観念」の意味はない。(英語でイデアにあたる語は「form」)
今まで「アイデア(英語のidea)」という言葉の由来がイデアだと思っていたが、意味的には違うものになっているのか。ややこしいな。
まあ、これはそこまで重要でもないので次に進みたい。
・アカデメイア
900年続いた学園。これは「アカデミー」の語源で間違いないだろう。書いてないけど。
プラトンはこの学園で、天文学・生物学・数学・政治学・哲学など、幅広く学べるようにした。
指導方法は主に「対話」や「問答」。
ソクラテスがやっていた哲学のスタイルを踏襲しているといえる。
プラトンは、アカデメイアに著作を残していたから、その多くがきれいに保存されることになった。
代表的著作は『国家』と『法律』。
その中で、政治形態についても持論を展開していた。
それまでに存在した政治形態は2パターンに2つずつの計4つ。
それぞれ何によってリーダーが決まるかが異なる。
①王政:血統
②僭主政:実力
③貴族政:身分
④寡頭政:実力のある小集団
このうち、①②は支配者が1人であるパターン、③④は支配者が複数(少数)であるパターンだ。
プラトンはここに、5つ目の政治形態を提案した。
⑤民主政だ。
多数の人間によって支配するスタイルである。
また、民主政だけでは不十分で、「哲人政治」を唱えた。
哲学者、つまり賢い人たちの会議によって決めるということだ。
「民主政+哲人政治」というハイブリッド型政治が理想であるとしたのだ。
これ、今の感覚でとらえると「ふーん」という感じだが、よく考えると、紀元前5世紀の主張なのだ。
2500年ほど前に、4パターンの政治形態を並べて比較し、5つ目として「民主政治がいいよー」と言っていたわけだ。
すごいことだと思う。
これが当時としては革新的だったからこそ、きちんと残っているし、こうしてのちの書物で紹介されているんだろう。
哲学の難しいところは、哲学者たちが言っていることが、今では常識というか、当たり前のことになりすぎて、「だから何?」となりがちなところだ。
それが当時としていかに革新的な発明・発想だったのかを考えないと、その重要性に気づけない。
哲学の歴史を学ぶことは、人間の思考の歴史をたどることでもある。
今の常識がどのように形成されてきたのか、しっかりたどっていこう。
次回は、アリストテレスについて。
※参考テキスト