思考するツールとして言語が生まれ、人は考えるようになった
第1章は「宗教が誕生するまで」。
「はじめに」で見たように、先に生まれた宗教の背景を見ていくようだ。
これまで前段の話が主だったが、いよいよ内容に入っていく。
宗教が生まれるより前に起きたことに、「言語」の発達が挙げられる。
そもそも言語がないと人間は宗教も哲学も生み出せなかった。
というより、「考えること」自体、言語がないとできない。
脳が進化して、思考するツールを求めたことにより、言語がもたらされたという。
FOXP2という言語中枢にかかわる遺伝子が、人が世界に広がった約10万年前に変化したようだ。
うーん、この遺伝子の名前は覚えられる気がしない。
とにかく、思考ツール(言語)を獲得した人類は、「時間」の概念を構築した。
日の出から日の入りまでが示す「1日」
月の満ち欠けが示す「1月」
これらの時間の概念は、古代エジプトで生まれ、そこから太陽暦がつくられた。
時間の概念でさえ、言語があってこそ構築できたことなのか。
まあ、言われてみればそうだ。
ちなみに、「1週間」と7つの曜日という概念はメソポタミアで生まれ、太陰暦のもとになった。
自然の時間は永遠に繰り返すように見え、円環をなしている一方で、人には生と死、始まりと終わりがある。いわば直線的な時間の流れがある。
この2種類の時間に対して、なぜなのかを問う気持ちが人間に生まれたのではないかと著者はいう。
「終わり」を迎えた人間はどこに行くのか、と。
まさに、哲学と宗教のテーマだ。
定住生活をスタートさせた人類は、身の回りの存在を支配する生き方にシフトした。
なぜか?
狩猟を中心に暮らしていた時代は、そのときによって自然の恵みを得られたり得られなかったりした。サバンナの動物たちと似たようなものだ。
その意味で自然とは対等だった。
だが、定住生活をするということは、植物や動物を安定的に得られるようにコントロールしていくことになる。
そういう生活を実現したところで、人間は自然を「支配」するような意識を持った。
植物を支配する農耕、動物を支配する牧畜、金属を支配する冶金が発展した。
なるほど、説得力がある。
実際に、人間の脳の進化は、ここで止まっているらしい。
ただ、人間の欲求はここで止まらなかった。
1日中食料を探し回らなくてよくなった支配層の人間は、物事を考えることが多くなった。
彼らは考えを深めるうち、あらゆることを知りたくなった。
太陽を昇らせているのは何者なのか。
人の生死を操っている何者かがいるのではないか。
そういうことを知りたくなった。
そして、「自然界のルールをつくっている存在」を考え出し、祀ったり祈ったりし始めたのではないかと言われている。
これが「神」や「宗教」という概念の創出につながっていく。
1万2000年前のメソポタミアで起こったことのようだ。
このあたり、『サピエンス全史』に載っている「認知革命」や「虚構」と強く関係がありそうだが、途中で読むのを挫折してしまったのでほとんど覚えていない(笑)。
しかし、人間はこの頃から欲求を広げ続けてきたんだなと実感する。
より快適に生きたいというだけだったのかもしれないが、身の回りを支配するという考え方が、膨らみに膨らんで今まで続いているのだ。
何かが便利になると、もっともっと便利になってほしいと思うようになるし、何かを知ってしまうと、もっともっと知りたくなる。その繰り返しでしかないのか。
哲学を学びたいというこの欲求も、この頃の人間の遺伝子を受け継いでいるということだ。
※参考テキスト